「ギャラリーギャラリー」最後の展覧会
明日までの開催、そしてこれがこの画廊ラストの展覧会になる。
「縫い合わせる 西尾美也×岡本光博(installation)」
岡本光博さんが制作した服についているブランドタグを縫い合わせたシャツ。そして画廊を包む?じゃなくて矩形の布で型作る西尾さんの作品。
ブランドタグの作品は、制作されたのは2010年頃らしい。消費社会を表現する作品でもありながら、本展においては、ブランド名から湧き上がる思い出、懐かしさと、この画廊でのそれぞれの思い出が交錯していくような感じで小さな空間がどんどん広がっていくようであった。それは西尾さんの作品にもつながっていった。
あいちトリエンナーレでみた西尾さんのナイロビで道行く人と着ている服を交換して
その場で着替えて写真をとるという映像を久しぶりにみた。初めて見たときは新しいアートを見つけたと思ったっけ。もうその作品ができてから10年以上経っているそう。
いい展示をみせてもらった。この画廊のあと、どうなるんでしょう。
今年のベスト10展覧会 その⑩
今年のマイベスト⑩入りした展覧会を紹介してきて、今日は10つ目。
順位はつけない(つけれない)けど、この10つ目が№1かも。
「岡山芸術交流2022」
3年に一度開催される芸術祭。世界で活躍する作家の作品が岡山で見ることができる貴重な機会。1回目、2回目とレベルの高い作品群に身震いするほどに興奮させられ、3回目の今回を心待ちにしていた。
今回も素晴らしかった。
中でも特に刺激を受けた作家の一人はHaegue Yang(梁慧圭・ヤン ヘギュ)。現在はソウルとベルリンを拠点に活動している。写真は作家と鈴のついた長いロープのようなものが作品《Sonic Cosimc Rope》。童話がモチーフとなっている作品。この彫刻を振ると鈴の音が鳴り響き、私たちの視線は自然とロープを伝って音が鳴り渡る会場全体に向けられる。
現在シンガポールで開催されているシンガポールビエンナーレで第13回ベネッセ賞を受賞された。日本の美術館で個展が開催される日も近いかもと楽しみにしている。彼女の作品をもっと味わいたい。
上の写真は、NY在住のAsif Mian(アジフ・ミアン)の作品。
総合プロデューサーの不祥事があって、この祭典がなくなってしまうのではないかと心配したけど、開催されてよかった。(不祥事は不祥事として)東京や大阪ではなく岡山で開催される意味を深めてほしい。この祭典が浸透すること=アートが真に身近、そして質のいい芸術品を見る楽しみを広めてほしい。3年後が待ち遠しい。
換気扇を掃除する合間に。
今年のベスト10展覧会 ⑨
展覧会振り返りに戻り、ベスト10入りした⑨つ目。
名古屋市美術館で開催した「布の庭にあそぶ 庄司達」展。
タイトルだけでも惹かれて名古屋へ。
庄司達(さとる)さんは愛知県を拠点に活躍する作家。80歳を超えた今も現役で活動されている。布を使った作品を制作されている。
初めて見たのは岐阜県美の円空大賞展で。白い布を細い木の棒にひっかけて?屋根のように展示され、木の棒の間をすり抜けてその作品の下を歩くことができた。スリルもありつつ、布の白が反射した光の中、ありそうでなかった空間に一気に魅了された。
その作家さんが庄司さんだったと、この名古屋市美のチラシで判明。(つながっていく瞬間はうれしい)
名古屋と関西はそれほど距離が離れていないのに、庄司さんのことは初めて知った。
情報が行き交う現代でも、なかなかその地域に住まないと(精通しないと)知らないことってあるんだなとも感じた。そう思うと、各地の美術館にしてほしいことが浮かんでくる。またそういう情報もつかんでいきたい。
庄司さんの作品はまたどこかで出会いたい。すばらしい展覧会だった。
森本絵利展@saiギャラリー
今年のベスト10の途中だけど、番外編。
最近見た肥後橋にあるsaiギャラリーで今日まで開催していた
森本絵利展「contour map」
彼女の作品を初めて見たのは藤本由紀夫さんのアトリエにお邪魔したとき。瓶の中に細かい粒?
それは、細かく細かく彼女が切り刻んだ新聞チラシ。とっても細かいけど、きちんとそろえて切られているのがわかる。
その後saiギャラリーで再開してこれまで何回その細かい紙の貼った瓶を眺めたことだろう(そしてほしいとも何回も思って今にいたる)。
そして平面作品。大きさが違う粒が描かれている。大きさが違うと言っても大きくても2,3㎜ぐらい。
何を見ているのかわからなくなるぐらい。でも奥行や広がりが生まれる。
驚くのはそれだけではない。粒が描かれたキャンバスの隣には、「正」の文字が並んだ作品が。(作品?)とも思えてしまうのだけど、カウントしているんだなとわかるものの、何を数えているおのかも謎。
そう作品の小さな粒粒を大きさごとに何粒描いたかをカウントして「正」と記しているのだ。
溜息と感心と呆れと、そしてこれをアートとしてどう解釈するべきなんだろう……
頭がパニックになりつつも、ギャラリーの静けさをさらに静かにしてくれるような
作品でもあるので、意外に落ち着いてもしまう。読んでもわからないかと思うので、チャンスあればぜひみてほしい。
今年のベスト10展覧会 その⑦・⑧
今日は寒い。海近くの職場では雪がちらついていた。
さて今日は⑦と⑧
まず⑦ 大阪市立自然史博物館で開催された「田中秀介展:絵をくぐる大阪市立自然史博物館」。
恐竜やゾウの骨格標本がある展示室に、田中秀介さんの作品。彼が描いたのは、まさにその展示室の風景。展示品を後ろからみたり、来場しているカップル越しにみた風景や
化石や火山石のドアップなど。
彼の作品には、いつもちょっとしたずれというか、段差があっておもしろい。
本展でもいかんなく彼の特徴が発揮されていた。
巨大なキャンバス9枚、見上げる高さに掲げられていて首が痛い。それだけでおかしい。
漫才師の突っ込みの人がボケの一言によろけるように、私もいつも彼の作品や言葉によろけながら楽しんでいる。
画像は展覧会サイトから。
⑧つ目は練馬区立美術館「出会い、120年のイメージ 日本の中のマネ」
切り口が面白かったのと、なんといっても大好きな福田美蘭さんの作品を
存分に味わえた。来年は名古屋で福田さんの個展があるとか。
今年のベスト10展覧会 その④・⑤・⑥
今年を1つ1つ振り返っている間に来年になりそう。
ということで今日は今年よかった3つの展覧会を書き残す。
ブログの続きで今回は④⑤⑥つ目を。
まずは京都・祇園にある現代美術 ⾋居で開催されたマルタ・コラーダ(MeiMeiというアーティスト名で活動)『KAMI』。
作品は日本初公開。写真家としてアート表現をスタートした彼女は2016年から写真のようにフェルト、陶芸を使った立体作品を制作し始める。
狐やうさぎと、文字で書くとそれ自体を想像してしまうけど、実物を前にすると神秘的で可愛さや奇妙さ、ちょっと怖さもあって、色々な感情を湧き出させる作品。独特の世界観にすっかりハマってしまった。
過去の写真の作品もあってそれらも面白い。写真は事実を写すという概念を崩してくれる作品なのだが、それがわかるのは作家自身と、作品について話を聞いた人のみ。くすぐられた。
⑤はBBプラザ美術館「太田三郎展 人と災いとのありよう」
今年のBBプラザはすばらしかった。
⑥は染・清流館 「布の翼」呉夏枝・柳幸典・河田孝郎・照屋勇賢
染織をイメージをいつも壊してくれる好きな美術館での展覧会。照屋勇賢という作家を知ることができたことも大きな収穫となった。
今年のベスト10展覧会 その③
やはりリヒター展はベスト10に入るでしょう。
東京からの巡回。豊田市美の天井の高い部屋でみるリヒターの作品は胸がすくような、思い切り深呼吸したくなるほどの気持ちよさがあった。
抽象画、具体画どちらも彼が追求する「イメージ」「見るとは」を表現する方法で、両方とも彼が歩く1本の線の上にあるとわかったことも大きな収穫。本展も時代順に作品をみることができた。どの展覧会においても、時代順で作品をみると、その作家が何を見て、何を感じていたか、彼らが生きたその時代と作品との関係など、全体を俯瞰できるのがいいし、理解がしやすい。
リヒターの《ビリケナウ》はホロコーストを題材とした作品。彼はこれを描くことが使命を考えていたと。その歴史を文字でしか追ったことがない自分が、この大作をどこまで理解できるのかと思いつつ、何かをわからなければならないと必死になる。それってどうなん?と少し思うけど。
個人的には《ビリケナウ》以降の抽象画に心が動いた。色が華やかになり、描く悦びがそのままキャンバスに表れている。自分自身へ使命を課していた彼の覚悟の大きさを思い知ると同時に、そこから解き放たれた様子を感じた。最後となるアブストラクト・ペインティングを前にジンと熱いものがこみ上げてきたのは単純すぎるかな……
李禹煥、リヒターと世界トップクラスの展覧会を味わえた貴重な2022年だった。