見感 mikan

アート好きのひとり言

今年のベスト10展覧会 その③

やはりリヒター展はベスト10に入るでしょう。

東京からの巡回。豊田市美の天井の高い部屋でみるリヒターの作品は胸がすくような、思い切り深呼吸したくなるほどの気持ちよさがあった。

 

抽象画、具体画どちらも彼が追求する「イメージ」「見るとは」を表現する方法で、両方とも彼が歩く1本の線の上にあるとわかったことも大きな収穫。本展も時代順に作品をみることができた。どの展覧会においても、時代順で作品をみると、その作家が何を見て、何を感じていたか、彼らが生きたその時代と作品との関係など、全体を俯瞰できるのがいいし、理解がしやすい。

 

リヒターの《ビリケナウ》はホロコーストを題材とした作品。彼はこれを描くことが使命を考えていたと。その歴史を文字でしか追ったことがない自分が、この大作をどこまで理解できるのかと思いつつ、何かをわからなければならないと必死になる。それってどうなん?と少し思うけど。

 

個人的には《ビリケナウ》以降の抽象画に心が動いた。色が華やかになり、描く悦びがそのままキャンバスに表れている。自分自身へ使命を課していた彼の覚悟の大きさを思い知ると同時に、そこから解き放たれた様子を感じた。最後となるアブストラクト・ペインティングを前にジンと熱いものがこみ上げてきたのは単純すぎるかな……

 

李禹煥、リヒターと世界トップクラスの展覧会を味わえた貴重な2022年だった。